証
ヤマケイ文庫を最近読むようになった。
はじめは「生還」
遭難して生還した人たちへのインタビューが元になっている。
そして、これは山で命を落とした登山家たち。
生還を読んで、私は、
「ひとが生きることに執着する様」
に感銘を受けた。
なんとしても生きて帰るという強い意志。
条件だけでなく、生き延びるにはそれも必要らしい。
そんな、形のないものが。
たぶん、私は、なぜそんな生きようとするのか、わからない。
なぜ、そんな辛い思いまでして必死に生きようとするのか。
生きることには、人それぞれに、なにか意味や意義のあることなのだろう。
もちろん、死への恐怖も含め。
・・・
この本で印象的だったことは
「生活は虚で、山が実」
ということ。
もちろん、すべての登山家がそうではないだろう。
でも、山に登るというのは、日常の続きにあるものではなく
「非日常」
なのだと、ヒリヒリ伝わってきた。
そして、それに、取りつかれているのだ。
日常では飽きたらない人たち。
読んで、"羨ましいな"と思った。
自分を、自分の人生を、時間お金身体、そういったものを捧げられる何かを持つことに。
熱を、燃やせることがあることに。
たとえそれが死に繋がろうとも。
羨ましくて仕方がない。
活きるとは、自分のなかにある"穴"を埋める作業なのかもしれない、と感じた。
自分のなかにある、茫漠とした欠落。
放っておくと、ただただ虚しさだけがめぐる穴。
ただただ、それを埋めるために生きている。